瀧本哲史「技術を支えている根本は、数学」

投稿者: | 2019年6月20日

by 瀧本 哲史(京都大学 客員准教授)

瀧本氏が次に映し出した写真に、場内から歓声が上がった。「ハリー・ポッターだ!」。投影されたのは、映画『ハリー・ポッター』シリーズの登場人物、ハリーやハーマイオニーたち魔法学校の生徒が横並びに立つ写真である。

 

「そうだね、皆さん、毎日勉強していて『なぜこんな何の役にも立ちそうにない、三角関数とか平行線の証明とかをやらなきゃならないんだろう』と思いませんか?」

 

無言でうなずく生徒たち。

 

「でも実は、皆さんが今学校で習っているのも、ハリーたちと同じ『魔法』なんです」

 

瀧本氏がそう言うと、生徒たちは「どういうこと?」と言いたげに、ぐっと席から体を乗り出して耳を傾けた。

 

「現代の魔法というのは、科学と技術です。過去の偉人たちが発見した偉大な真理や発明が、いまの私たちの生活を支えています。例えば飛行機。150トン以上もある鉄の塊が、日本とアメリカの間の空を飛んでいくなんて、江戸時代の人が見たら『魔法だ!』とびっくりしますよね。そうした技術を支えている根本は、皆さんの多くの人が嫌いな『数学』なんです」

 

もしも人類が三角関数を発明していなければ、飛行機を飛ばすことも船を運行することもできない。電車のモーターや車のエンジンを作ることも不可能だ。現代社会の「魔法」はここ20年でさらにスピードを上げて進化し続けている。

 

「今から34年前に描かれた漫画のドラえもんに、『おこのみボックス』というひみつ道具が出てきます。小さな箱に『テレビになあれ』というとテレビになって、レコードで音楽を聞くことも、カメラにもなる。

 

それってつまり、皆さんが持ってるスマホですよね。スマホはさらに、ゲームもできれば電話やLINEで友だちと連絡を取り合ったりもできます。わずか30数年前の『夢の道具』が、それ以上の性能で、現実になっているんです」

 

医学の進歩でいえば、これから人間の平均寿命は100年を超える時代になるとも言われている。米国の起業家イーロン・マスクが経営するスペースX社は、人類を火星に送り込むことを真剣に目指してロケットを開発している。

 

今日の瀧本氏の講義を聞く彼女たちが大人になる頃には、道路を走る車の多くはAIにより自動運転になっている可能性が高い。20年前に今のスマホの隆盛を予見できた人は誰もいなかった。テクノロジーの進歩がもたらす未来は、現在を生きる我々の想像力をきっと超えるだろう。

 

「そうした技術の元になっているものこそ、今、皆さんが学校で習っている数学や自然科学です。つまり今、皆さんは学校で、『魔法の元』を習っているんです」

Reference:京大ナンバーワン教官が教える「勉強することのホントの意味」




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