森岡 私はもともと理系で、数学は得意でしたが、感覚的な分野が劣っていて、ファジー(曖昧)な国語が非常に苦手だったんです。だから何事もロジカルにしないと咀嚼できなかった。そのため、マーケティングについても、20代のころから自分で数学的に体系化する訓練をしてきました。マーケティングは何でも数式にできるんですよ。
佐藤 感覚的な部分もですか。
森岡 私は、人が物事を選択するときの脳の中の構造は、何についても同じではないかと思っています。コンビニで水を選ぶのも、どの子が好きなのか選ぶのも、脳の中では同じことが起きている。
佐藤 なるほど。
森岡 例えてみれば、頭の中に10面体のサイコロがあって、5面がディズニーランド、2面がUSJ、残り3面には他の地域のテーマパークと書いてある。どこかテーマパークに行こうと思った人は、それを頭の中で振る。すると、半分はディズニーが出るわけですね。人が何かを選ぶにあたって何度もサイコロを振ると、一定の結果が出てきます。その出目の回数に加重平均をかけた社会のまとまりが市場シェアになります。
佐藤 その選択が数式で表せるのですね。
森岡 選んだ行動を統計学確率論的に計算すると、一つの数式で説明がつきます。それは「負の二項分布の数式」と呼ばれるものです。
佐藤 大学数学のレベルになりますね。
森岡 ええ、これは私の中でも大きな発見でした。この数式自体は数学好きな人だけにわかればいいのですが、要は、人間は意識的にも無意識的にも、いくつかのオプションの中から、「怠惰な脳」が何かを選ばせているということなんです。
Reference:森岡毅(刀 代表取締役CEO)【佐藤優の頂上対決/我々はどう生き残るか】
「数学って必要?」とは
「数学って必要?」では、数学が社会に出て役に立つのか、また役に立つのであれば、どのような場面で役に立っているのか、ということを紹介しています。「数学って必要だったんだ」と少しでも感じて頂ければ幸いです。